それぞれ仕事に邁進して来たクライアント夫妻は、家族共有の時間を大切にした新しい暮らしに比重を移すことにしました。都心にありながらも地面に接した、ゆったりとした毎日をおくれ、ペースを落とした仕事が出来るコーナーを持ち、友人を招いて今までの交流も続けられるような暮らしを望まれました。
敷地は閑静な住宅地にありますが、西側と北側には隣地住宅が近接しています。東側には昔からの住宅のアプローチの樹々があり、その隣地の樹々と庭・テラスを連続させることで豊かな外部空間をつくりました。その外部空間をいろいろな方向から楽しめるように室内空間を配置しています。庭に挟まれた空間は、木製折れ戸を全開する事で内部から外部に反転し、暮らしを外部へ拡張して行きます。風や鳥・虫の音、昼・夜、四季を取り込む暮らしを楽しむような昔の住宅にあった縁側空間を再考することで、新しい暮らしを考えていきました。
2012年 撮影・新 良太氏
[ キーワード ]
エンガワ空間・屋根付テラス・鬱蒼とした庭・外風呂・ライブラリー・暖炉・デイベッド・コンクリートキッチン・地下室・バンドルーム・ゴルフシュミレーター・ホームシアター・ホームオフィス・ギャラリー・バーキッチン・和室・自然素材・PS冷暖房・木製サッシ・コールテン鋼・チーク材・外断熱
[ 概要 ]
構造・RC造 規模・地下1階、地上2階 敷地面積・396.48㎡(119.93坪) 建築面積・237.71㎡(71.90坪) 延床面積・498.89㎡(150.91坪) 用途地域・第1種低層住居専用地域
木製折れ戸を開放することで、風や鳥・虫の音、雨音が入り込み、外部を楽しみながら過ごせるエンガワダイニングです。
エンガワダイニングの荒いタイルの床に庭の木漏れ日が映り込み、外のような開放感で食事をすることができます。
床タイルは荒い目地材を全面的に塗り込んだ後に研ぎ出して、外部を引き込んだようなラフな仕上げとしています。庭にはヤマザクラ・サルスベリ・シャクナゲ・ジューンベリーなど、季節ごとに色着く木々を鬱蒼と植えています。
吹抜けの上に大屋根がかかるリビングです。多くの友人を招いて楽しく団らん出来る、広くおおらかな空間です。
吹抜けの上部には2階のファミリールームと寝室を結ぶ鉄骨ブリッジが架かりPS放射式冷暖房パネルが室内環境を整えています。
パブリックリビングからの眺めです。コンクリート製のキッチン・家具・窓台、荒い目地の赤タイル、特別に焼き上げた大判の床タイルがラフな雰囲気が内外の空気感を近づけます。
コンクリートでつくったキッチンです。座ったゲストと目線が合うように床を一段下げています。左奥にエンガワダイニングが見えています。
パブリックリビング後ろの階段です。2階はクライアントご夫婦のプライベートゾーン、地下はバンドルーム、シアタールーム等、友人たちと趣味を心おきなく楽しめるスペースになっています。
キッチンの後ろにあるファイヤープレースはコージーな寛ぎの空間です。この住宅では小さい居場所と大きい居場所をちりばめています。
幅が1400mmと狭く、2層分の高さがある隙間のようなプロポーションのライブラリーです。一人の読書の居場所としてはとても落ち着くスケールです。
庭からライブラリーを見ています。ライブラリーはコールテン鋼という赤錆をつけたスチールサッシにして、赤レンガタイルや植物の緑を引き立たせています。
テラコッタで仕上げた2階のテラスです。庭にはヤマザクラを植えて、花見を楽しむ事もできます。庭を挟んで右奥にライブラリーのボリュームが突き出して見えます。
大屋根の深い軒下空間です。1800mmの奥行きがあるので雨の日にもソファに座って、読書をすることもできます。
ファミリールームと寝室を繋げる大屋根の軒下空間です。奥の寝室と軒下空間は木製の引戸を開放する事で内外一体となります。
2階のテラスから入れるライブラリーの入口です。中の階段から1階に回遊することもできます。「様々な居場所と回遊性」を建物全体で考えています。
ファミリールームと寝室を繋げるブリッジには小さな仕事スペースを設けています。乳白ガラスのフィルターを通して光が柔らかく室内に入ってきます。右は手摺を兼ねたPS放射式冷暖房です。
漆喰で包まれた2階のファミリールームから食事室を見ています。2階はクライアントご夫婦のプライベートスペースになり、1階より小さな落ち着きのあるスケールでまとめています。左奥はエンガワや外風呂に繋がります。
2階食事室のキッチンです。オープンキッチンですが、家具のようなしつらえにして、他の家具と調和するように考えています。
地下階段からギャラリースペースを見ています。奥は水盤を有するドライエリアです。
地下は一般型枠を使ったラフなコンクリート空間にして、地上階と対比させた雰囲気の空間をつくり、非日常的な生活(パーティーや演奏会)を楽しむ事ができます。
ギャラリーホールとバーキッチンは多くの友人を招いて楽しく団らん出来る場所となります。右手はコンクリートでつくったバーカウンターとグラスホルダーです。
上部の照明がグラスに当たり光を乱反射させ、照明器具のような設えにしています。
ギャラリーホールから階段を見ています。左手奥はバンドルームへ、右手奥はシアタールームに繋がります。
地下にあるゲストルーム等で使用する和室です。ドライエリアは井戸のように上部から光を取り込みます。水盤を張る事もでき、水と光と音でもてなす空間に設えています。
夜になると、また違った様相が浮かび上がります。エンガワから食事室を見たところです。。左手はデイベットと外風呂を設えています。右手はテラコッタのテラスです。木製折れ戸を開放することで、限りなく外に近いエンガワになります。
外風呂から庭の木々を眺めています。ヤマザクラがライトアップされ贅沢な入浴を楽しむ事ができます。
テラコッタのテラスからエンガワを見ています。テラコッタテラスーエンガワーデイベットー外風呂と階段状に連続していきます。
大きな屋根が浮かんでいるように見える夜景です。奥は寝室へと繋がります。