浅草九倶楽部+浅草九劇・2017

かつて軽演劇や映画、見せ物小屋など芸能・娯楽の聖地であった「浅草六区」。
敷地はその六区の北側、浅草寺の奥に位置するひさご通りに面している。
 
劇場を核として、サロン・ホテルを交えた文化交流拠点をつくり、ここに集う人々や周辺の人々も巻き込んで、総合エンターテインメントを創造、発信していきたいというのがクライアントからの要望であった。

浅草における文化交流拠点としての劇場・サロン・ホテルと言うプログラムでは「創る人、演じる人、観る人」すなわちパフォーマーだけでなく、ホテルの宿泊者や運営者、サロンに集う地元の人々、周辺を散策する観光客などを巻き込んでいくことが一つのポイントであると考えた。

敷地面積は326㎡と小さく、さらに変形している。先ず最大限の劇場ボリュームをつくり、さらに劇場を街に開いて行くために「バックステージシアター」というコンセプトを考えた。通常通りからの入口、ホワイエ、客席、舞台、楽屋とする劇場の空間配置を、通りに面して楽屋を設け、入り口、ホワイエ、舞台、客席の順に表と裏を組み替えている。
この構成にする事で、ある時にはホワイエが舞台の延長となったり、楽屋とホワイエを通りにつなげることが可能となり、通常一般の観客から隠される場所も開いて行くことで、「創る、演じる、観る」という行為がひさご通りや路地に溢れ出て、周辺を巻き込んで行けるような仕掛けにした。劇場は100席弱の小規模劇場である。

多種多様な使われ方によって、ここから様々なエンターテイメントが生み出され、またひさご通りから発するうねりが六区を中心とした浅草エンターテイメントの盛り上がりにも繋がっていく事を期待している。


2017年 撮影・Nacasa&Partners

[ 用途 ]
サロン/飲食店(ザックバラン)・劇場(浅草九劇)・ホテル(ワイアードホテル浅草)

[ 概要 ]
構造・RC造+S造 規模・地上10階
敷地面積・326.79㎡(98.85坪) 建築面積・271.99㎡(82.27坪) 延床面積・1489.97㎡(450.71坪)
用途地域・商業地域

劇場コンサルティング : 株式会社 シアターワークショップ
企画立案・環境デザイン : 株式会社アワーカンパニー
アートディレクション : ドゥービー・カンパニー株式会社
サロン・ホテル内装設計 : カフェ・カンパニー株式会社

浅草九劇
Wired Hotel Asakusa


1_2ひさご通りから見る。1階がサロン、2・3階が劇場(一部ホテル)、4~10階がホテル。


2_3ひさご通りに面した2階が楽屋で、役者の様子が通りににじみ出て来る。


3_4櫓代わりのコーナーのバルコニーや大きな劇場サインやコルトンサインが路地に賑わいを演出する。


4_3全盛期の六区をリスペクトした、赤茶のレンガタイルとシンボリックな劇場サイン。


5_32階にある劇場ホワイエに通じるエントランス階段。


6_5花屋敷からひさご通りへ向かう路地の景色。劇場がある3階まではRC造で4階より上部はS造になっている。


7_3ホワイエ:「ASAKUSA KYUGEKI」の文字を抽象化したデザインの建具の奥が楽屋。


8_2楽屋はホワイエと建具一つで仕切られているので、様々な使われ方に対応できる。足元のスリット窓でひさご通りとつながる。


9_2ホワイエ・劇場とは対照的に木を基調とした落ち着いた雰囲気の楽屋内部。


10_2ホワイエ:巻き込む・発信するというコンセプトを表す「渦」グラフィック。その奥が舞台なので劇場の延長としても使えるように、壁・床・天井は黒を基調としている。


11_2ホワイエ:「渦」グラフィックの防音大扉を開けると、ホワイエと舞台が繫がる。


12_2「九渦/ココノウズ」グラフィックは「中心の九(浅草九倶楽部)にさまざまな人を巻き込んでいく、という意味と、中心の九からさまざまなエンターテインメントを発信していく、という意味の、2つの渦が交じりあう」というコンセプトでデザインされている。


14_2客席へ通じる側廊:レッドカーペットをイメージした床と天井。


15_2側廊の壁はリン酸処理されたスチールパネルで、磁石により自由にポスターや写真の掲示をすることが可能。


16_2劇場空間:間口10.2m×奥行き11.1m
舞台:間口10.2m×奥行き4.5m(拡張可能)×高さ4.1m
客席(基本仕様):一般席95席、車いす席1席
床は可動式でオールフラット、スタンディングライブ形式、センター舞台など多様な形式に対応可能
高性能の防振防音構造、昇降式バトンなど100人規模の劇場としてはハイスペックな設備を整える。


17_2舞台奥の防音扉が開くと、ホワイエ・楽屋とつながる。


18_2照明が入った状態の舞台。


19_2舞台から客席を見る。


22_2特注寸法で椅子を製作し、法令を遵守の上、客席間隔をつめ、舞台と客席の距離を近づけ、小劇場ならではの臨場感をアップした。


23_3舞台奥の扉が閉まっている状態。


24_2舞台奥の扉を開けた状態。


25_2さらに楽屋の扉も開けると客席からひさご通りまで見通せる。


26_2天空率はあえて使わず、道路斜線のセットバックでボリュームをつくる事で、街路に対する圧迫感を減らし近隣の浅草の街のスケールに合わせている。


27_3道路斜線によって生まれる複雑なテラスがホテルの付加価値となり、ひとつの街のような表情を生んだ。


28_2最上階のペントハウス風のホテル客室。
道路斜線のセットバックにより、各階の平面形状が変わるので、同一客室プランを作らず、各室が個性が出るように調整していった。ドミトリーからハイクラスの客室が、様々な階に配置され、多様な人達が混在するようにした。


29_2最上階の浴室からはスカイツリーと花屋敷が望める。


30_2大きなテラスをもつ客室。道路斜線がそのまま室内に現れる。


31_2各客室は様々な形状のテラスをもつ。


32_2鉄骨の梁を現したラフな雰囲気のドミトリー階のラウンジ。奥の部屋が2段ベットのある客室。

事務所概要

自己紹介

住宅設計について

家つくりを考えている方へのメッセージ

大塚 聡・略歴

大塚聡アトリエ・略歴

作品掲載誌

受賞

浅草九倶楽部+浅草九劇・2017

エンガワの家・2012年

改修・隠れ家リトリート・2011年

下北沢の家・2010年

経堂の家・2009年

高尾の家・2007年

中野中央の家・2005年

白州の週末住宅・2005年

北沢の家・2004年

桜新町の家・2004年

遠州浜の家・2002年

軽井沢のゲストハウス・2002年

大和町の家・2000年

深沢の家・1997年

計画案・MYOプロジェクト

コンペ優秀賞・暮しの道具

コンペ案・三次市民ホール

コンペ案・沖縄県看護協会

設計のプロセス

以上が設計のプロセスですが、より詳しくは以下のQ&Aも参考にして頂ければ、と思います。

はじめに

関町の家・建て方

小岩の家・実施計画

小岩の家・内装

小岩の家・鉄骨階段

小岩の家・上棟

小岩の家・木造部分建て方

小岩の家・地下コンクリート壁

小岩の家・根切り+耐圧盤

小岩の家・基礎地盤補強工事

小岩の家-1

空間造形4 写真ギャラリー案内

一次掘削

地鎮祭

魑魅魍魎の生息地帯

坊主No.2

坊主No.1

はじめに

「鉛の心臓」 紅テントの虜に

「唐版 犬狼都市」紅テント洗礼

武蔵野大学環境学部環境学科住環境専攻・都市環境専攻

OZONE家つくりサポート

新宿梁山泊

紫水'DANNA'勇太郎

株式会社ワークス WOORKS Inc.

居待月〜the 18th. moon