8:00に起きて、ホテルでお粥を食べて、チェ・ミキは別用で一緒の方と、サウナに向かった。
現代建築はもう良いので、久しぶりに宗廟(チョンミョ)の、重厚感溢れる石畳を見に行こうと、歩いて行くも、火曜日は休み。
さてどうしようかと地図を見て、近くの昌徳宮(チャンドックン)へ。
ここも2回目だが、初めて来たのはずいぶん昔だ。
1400年初めに造られた宮殿で、回廊に囲まれた建物がいくつか繋がっている。
その連続感がとても心地よく、誘導されるように次から次へと移動して行ける。
小さな門や開け放たれた建具の向こうにまた囲い壁が見えたり、視線が行きとまりにならずに、ランドスケープのような空間が続いて行く。
まさに外と内が連続して行く空間で、ちょっと前に読んだ、ウイリアム・ギブソンのアフォーダンス理論によって、メキシコの建築家ルイス・バラガンの建築を読み取った論考を、現実に体験してるように感じる。
そうまさに、バラガンの建築と同じ性質を持った空間になっている。
前回の訪問から、現代の建築を続けて見て来たが、結局は昌徳宮(チャンドックン)に圧倒された。
それは何なのか、考えながら歩いていたら、時間がかかってしまい、急ぎ足でチェ・ミキと彼女の友人との待ち合わせ場所、広蔵市場(カンヂャン・シヂャン)入り口へ向かう。
約束の11:45に着いたが、よく考えたら入り口はいくつかある。
どうにか落合えて、3人で隣の東大門市場(トンデムンシジャン)の、タッカンマリの店へ。
「タッカンマリ」は「鳥一羽」と言う意味。
入ってテーブルに座ると、何も言わずに鳥一羽が煮込まれた鍋(と言うか洗面器のようなもの)が運ばれて来る。
しばらくしたら、この鳥を鋏で切り分ける。
鳥肉好きにはたまらない料理で、初めて食す。
日本で言えば水炊きか。これは旨い。
勢いに乗って2羽平らげてしまった。
なので最後にいれる、カルグクス(うどん)はスルーした。
今まではサムゲタンばかり食べていたが、これからはタッカンマリに決めた。
腹ごなしに、前回も訪れた、「東大門デザインプラザ&パークを散策し、再び広蔵市場(カンヂャン・シヂャン)に戻って、エゴマの葉のキムチや明太子、海苔等を買って、近くのソウルレコードへ行って、宋昌植(ソン・チャンシク)のベスト盤3枚を入手。
チェ・ミキの友人と分かれ、一度ホテルに戻り、食べ物を冷蔵庫に入れ、しばらく休んで16:30劇場に向かう。
劇場では本番目の最終ゲネプロの最中で、途中から席で見る。
18:00前終了。
気になった部分を金さんや大川さんに伝える。
初日前独特の緊張感が、劇場内に満ちているが、反面これは毎回とてもワクワクするものだ。
18:30チェ・ミキが劇場に来たので、近くの食堂に牡蠣のクッパ(クルクッパ)を食べに行く。
プロデューサーたちが食事に来たので、チェ・ミキを紹介する。
19:30前、チェ・ミキの友人二人が劇場に。
20:00から、「百年 風の仲間たち」開演。
流石東洋のラテンと言われる韓国のお客さん、最初から乗りが良い。
歌には拍手も。
役者たちも気が入っていて、緊張感ある舞台が続く。
この芝居は、「境界人」シリーズの第二弾として創られた。
在日(「在日」はそのままで、韓国語の単語になっているとのこと)の歴史を時代時代の歌を入れながら、「風まかせ 人まかせ」という大阪に実在する店を舞台に、開店20周年記念会の準備に集って来た馴染み客やお店の人たちが語ると言う芝居。
台詞の中にある、南北それぞれ、そして日本に対する悪口や批判は、在日と言う境界線の立ち位置から言えることでもあるが、それらが全て自分達に帰って来ることでもある。
大韓民国を批判した台詞も多いが、韓国の役者たちは最初は戸惑ったのではないか。
最後は趙博さんの歌「百年節」の大合唱。
しかし、韓国の方と我々日本人が反応するところがかなり違う。
これも面白い体験だ。
最後は手拍子と拍手で、22:10終演。
プロデューサーと握手すると、日本スタッフとコラボレーションが出来て、とてもエキサイティングだったと言われたので、僕もですと返す。
「夜を賭けて」のセッと造りの時もそうだったが、異文化の人たちとの接触は時に面倒で、相手の文化レベルまで疑いたくなるような状況にまでなることもあるが、そこを乗り越えることで、いつもの状況とは違ったレベルに達することがあり、刺激的だ。
コロスをやった若い役者たちが、5月初めの稽古の頃よりすごく成長したのが実感出来、とても嬉しかった。
ロビーでお客さんから一緒に写真撮影を求められている、彼らの充実感のある顔を見て、良いプロジェクトに参加出来、本当に幸せだと思い、旨が熱くなった。
近くのビアホールで初日の打上。
芝居が終わる時間は皆終電が近く、ほとんどのキャストが参加出来なかったが、楽しい会だった。
さらにもう一軒、いつもの居酒屋へ行って、お開きになったのは2:00過ぎ。
ホテルに戻り、シャワーを浴びもう一杯ビールを飲み、ベットに横になったらすぐ次の日の朝だった。